今回はGIANT TCX-1というシクロクロスのご依頼をいただきました。
(前回記事)
倉庫や車庫で眠っている長期保管車の修理依頼であれば喜んでお受けいたしますので
ご検討の際は悠々サイクルへお任せください。
今回の依頼車
GIANT TCX-1というシクロクロスバイク。
・TCR→速く走るための機材
・DEFY→長距離を快適に走る機材
・TCX→シクロクロス不整地機材
という大雑把な分類だったと認識しています。
当時ではシクロクロスの分野はまだまだ脚光を浴びておらず購入希望者も稀であり
とても影の薄い印象であった記憶があります(ロードバイク>>>シクロクロスのような風潮)
ブレーキ関係が今では珍しいAVIDになっている。(このころのGIANTはシマノを使わずフルSRAMの自転車も多くあった)
私自身もGIANTのフルサスMTBを所持していた際はブレーキ関係はフルAVID、コンポはSRAMであったためなじみ深いと感じた。
話はそれましたが今回のTCX-1、そこまで経年のない通常の交換修理作業と思っていたが当初の予想を覆し、色々と問題のある個体でありました。
修理の過程を一部始終納めましたのでご覧いただければと思います。
ワイヤー類
さすがに長期保管していたりそれまで酷使されていた分
ほつれや動きの悪さが感じられた。
アウターは綺麗な状態であったためインナー×4本の交換となりました。
その際に見るからに長い取り回しのアウター部分を適切な長さにトリミングを行う。
これによってブレーキ シフト関係の引きの軽さや美観にもつながるのと
写真のようにエンド部分のアウター内部の痛みを戻すことにもつながります。
タイヤ関係
ここももちろんタイヤチューブごと交換
タイヤそのものの面の痛みはなかったが、ひび割れと油分が抜けてカスカスになっていたため安全のために交換を行いました。
幸いリムバンドは空気圧がない状態での保管のためまったく凹のない綺麗な状態であった。
しかしながら前後タイヤが逆についておりホイールも逆についていたのがちょっと気になったポイントである(無料修正済み)
チェーン回り
チェーンの通す位置がガイド→テンションプーリーの途中の脱落防止部分の
内側にあるべきものが外側に通っており
それにより走行抵抗がとてつもないものとなっておりチェーン外れが頻発して危険な状態でした。
もちろんすぐに修正を行い、通常通りの取り回しに変更しました。(無料対応)
錆取り
これもコンポーネントの結構な部分で錆が発生していた。
ここも軽くではあるが錆取り剤とブラシで磨くことによって錆を除去した
Before
After
(写真では変化がわかりにくいが目視だと結構な差が出ました)
Rハブ周り
メンテナンススタンド上で空転させると通常はラチェット機構のおかげでチェーンが回転せずにホイール部分のみ回る。
しかしグリスや錆が原因で、フリーラチェット機構が働かずにチェーンがたるみ
脱落する状態でした。
明らかな異常状態なのでスプロケットを外してみると
スプロケ外しが入らないほどにドロドロのグリスが摘出されました^^;
これもきれいにふき取って、フリー部分にほんの少しルブを注油したところ
通常通りのラチェット機能が回復しました。
STIレバー
右側の(R側)STIレバーのラチェット部分の爪に散布されているグリスが
完全に水分が抜けヘドロ化
それにより通常9段分の変速が出来るはずが、2段しかできない状態
これを解決するにはまずはヘドロ除去のために
パーツクリーナーなどで清掃を行います。
しかし今回はその状況でも全く動作しなかったので最終手段
熱湯に近いお湯でSTIレバー内部にたまった油を溶かしだします。
今回はこの方法で通常通りの9段変速機能が復活しました!
まとめ
こういったイレギュラー業務に立ち向かうことが出来るのが
経年車両 長期放置車の修理の醍醐味でもあります。
今回は
・チェーンルーティンの間違い
・タイヤの前後が逆さま
・ワイヤーケーブルの取り回しが長すぎる
といった組み立て時点の調整・整備時のミスでの修正作業と
・Rハブラチェットフリー機構の異常
・STIレバーのグリスヘドロ化による動作不良
という長期放置車両ならではの問題が合わさった個体でした。
その分、完成時の達成感と嬉しさが割り増しで感じることが出来ます^^